2009.11.04 Wednesday
皇室の名宝展 伊藤若冲
昨日文化の日、東京国立博物館で行われている「皇室の名宝展」に行って来ました。
最終日ともあり、入場までに20分、お昼を食べるのにも1時間待ち。 前回、家族で常設展を見に来たときには、シニア層と外国人観光客ばかりで、人影もまばら・・・という状況でしたが、今回は若者、特に男性の姿も多く、日本文化に興味を持っている方がこんなに多いのかと、ちょっと嬉しくなりました。 今回の名宝展では、平成天皇在位20周年記念ということで、皇室に伝わる宝の中でも選りすぐりの素晴らしい絵画を見ることが出来ました。 狩野永徳の「唐獅子屏風」は、まさにエネルギーの爆発、といった風情。迷いのない筆致、完成されたレイアウト・・・図録でよく見ている作品ですが、実物の大きさにまず驚かされます。 これだけ緊張感のあるエネルギッシュな画面でありながら、筆致はあくまで自然、迷いなく流れるような動きです。 この巨大な画面で、これだけ完成された構図で描ける永徳の才に感服します。 そして、上村松園の「雪月花」 ああ、日本人に生まれて良かった・・・としみじみ思える名品です。 私は、あまり意識したことはなかったのですが「もののあはれ」に弱いようで、専門は日本文学、卒業論文は「蜻蛉日記」だったんです。 上村松園はもともと好きだったんですが、日本人ならではの着物の色目、題目の選び方、レイアウト・・・もう表現する言葉がないほど大好きな作品です。 伊勢物語、源氏物語、枕草子・・・と日本人ならば当然知っているべき3作品を取り上げつつ、なおかつ松園独自の世界を創作している・・・という、他に類をみない傑作です。 そういえば、日本人は昔、共通の知識として古典文学を知り、その上で成り立つ文化を築いていたんですよね。 和歌のやり取り、俳句、絵画・・・自分が日本文学好きだから、というだけではなく、こういった知識の遊びが廃れていってしまっていることは、本当に淋しく思われます。 次に、並河靖之作「七宝四季花鳥図花瓶」も、図肝を抜かれた逸品です。 漆黒の闇に浮かぶ、青葉滴る紅葉と春爛漫の桜・・・杜若の藍と飛び交う小禽・・・展示方法も見事だったのですが、この花瓶の周りには七重八重の人垣が。 片や膝を折り下から見上げ、片や天空より華と青葉を見下ろし・・・その優れた技巧にため息をつくばかりでした。 私はといえば、往きては戻り、そしてまた浸り・・・と何度もこの花瓶の廻りを巡り、完成された美に耽溺したのでした。 そうそう、会場には「花鳥風月」を表現したものが多く、特に孔雀は最も多く取り上げられた画材の一つでしたが、特に私が目を奪われたのは、荒木寛畝作「孔雀之図」でした。 後に取り上げますが、圧巻だった伊藤若冲の孔雀とも違い、西洋画を学んだ後の作品は、遠近法を用いた肉感のある、孔雀の生命感を感じさせる逸品でした。 羽根の一枚、脚の襞、緊張感の漂う計算されたレイアウト、完璧な省略。反面孔雀の羽の気が遠くなるほどの細密さ。 何時間でも見ていたいと思わせる作品でした。 他にも語りたい作品はたくさんあるのですが・・・ 今回、誰よりも、初めて実物を見て虜になってしまった画家は、伊藤若冲でした。 伊藤若冲は、2000年に生誕200年を記念して行われて展覧会を気に突如脚光を浴びた、特異な画家です。 伊藤若冲の名前は以前よりテレビで見聞きし、その作品も見知ったものだったのですが・・・ 今回、生きている間に若冲の「動植綵絵」を30幅、揃った状態で見られたことは、人生の僥倖、かけがいのな宝といって過言ではありません。 図録も買って、ネットでも検索してみたのですが、写真は実物には足元にも及ばない・・・これほど、図録と実物の差がある画家を他に知りません。 幸い、彼の作品は近年のブームの中で補修をされる過程で多くの謎が解明されています。 ただの白、に見える箇所でも「画絹裏面に黄土の裏彩色があり、それが画面の綾目から透けて、表面の胡粉表現と、黒色の肌裏地と重なって、視覚的に奥行きのある、輝くような美しさとなって見えるという、立体的構造には驚かされた」(皇室の名宝展図版解説より抜粋) そう、すべての彩色が多重に構成され、深みのある奥行きを感じさせる色となっているんです。 気が狂いそうなほど緻密な、細密画的な技法 にも関わらず、大胆不敵な、流れるような筆致で描かれた背景 寸分の狂いもなく計算されたレイアウト 一幅一幅が命を持ち、訴えかけ、迸る。 「雪中鴛鴦図」で見られる、鳥の完璧な描写とデフォルメされた背景。降りかかる雪は、胡粉を飛ばした飛沫の偶然の産物。 あれだけ完璧に、緻密に書き込んだ上で、偶然に任せる大胆さ。 惚れ惚れしてしまいます。 そして「諸魚図」に見られる親子蛸のユーモア。 江戸時代は洒脱をもてはやした文化とはいえ、伊藤若冲の作品には底辺に流れる「をかし」、洒落っ気に、心惹かれてなりません。 今回はガラスケースの中でしたが、もともと寄贈された相国寺の空間で鑑賞したい・・・ ******************* 私は子供の頃、親に連れられてよく美術館、お芝居、バレエ、歌舞伎と見に行ったんですそれは、大人になった今でも、私の血肉となり、宝となっています。 振りかえって、私は忙しさにかまけ、子供たちを芸術鑑賞に連れて行っていないんですよね。今回は、最終日ということもあって、一番下の息子しか連れて行けなかった展覧会。11月12日からは第2期がスタートします。 子供連れと気後れせず、ぜひぜひ東京国立博物館に子供連れで行って、日本の宝を見せてあげてください。 特別展のハードルが高いようであれば、国立博物館は常設展でも国宝がたくさん展示されていて、1日では見切れないんです。 建物も素晴らしいです!!展示方法も驚きの連続です(とくに法隆寺宝物館はオモシロイ!!です)しかも中学生以下は無料。 1回では見切れないので、何度か足を運んで、教科書でしか見たことのない品物に触れさせてあげてくださいね。 |


















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